カテゴリ:うたかたの大学生◆〜'06.3( 13 )

「好きなんだ、俺」
そう言われても、わたしは喜ばない。うれしくないからじゃない。

さしすせそ、なんて嫌いなんだ。

さみしい。さよなら。さいてい。さいあく。しらない。しんじられない。しかたがない。すまない。せいせいする。そっけない。
こういう言葉たちが顔を出し、大好きなだれかをなくしてきたんだ。ずっと。

すき。それはまだはじまりの言葉。
すぐに、さみしいさしすせそになってしまうかもしれない。
あいうえおにしていかなきゃ、いけないんだ。

あいしてる。ありがとう。いってきます。いってらっしゃい。うれしい。うきうきする。おかえりなさい。おいしい。
あなたがいて、わたしがいる。大好きなだれかがいてこそ、言える言葉たち。
あいうえお—「あい」があるから、「うえ」を向ける。なんて、素敵なカンチガイ。

「会いたいんだよ」だってさ。
さてさてーとっ。
素直になって、もっともっと、あいうえおのある人生をはじめよっか。
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「君はそんなところで埋もれるような人間じゃないよ」

自分って埋もれてたのか。
そう思ったところで、ようやく目が覚める。
この繰り返しの6時間。残りの18時間に起きた実話が夢になる。

—デモ、ナンデアンタニイワレナキャナンナイワケ?

今日も深爪。ってもう、切るところない。
仕方ないから、前髪を切る。
これが終わったら、どうすんだろう。

—ドコヲキッタラ、ラクニナルノ?
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 なんか最近、自分の言ってること意味不明。ストーンズの話してんのに、ボノが何とかとか言ってるし。MAYA MAXXとHIROMIX間違えたし。市川姉妹の名前がごちゃごちゃ。あと、犬に向かってニャーって言ったり。伊東美咲の名前が出てこない。絶対寒いときに暑いとか言ってる。1日の80%は「はいはい」って言って、なんも聞いちゃいない。
 行動まで不明になったら嫌だからって、家にこもってた何日か。コンビニに行くのもやなくらい。

 死んだ方がマシっていうか、みんないなくなればいいのにって思うのにだれもいなくなんないんだもん。じゃー死ぬし、って横暴。

 そんなこんなでさらにこもってた。人のいるところには行かない。(ママに付き合わされた表参道ヒルズ除く)電車にも乗りたくない。よって、動かない。みたいな。
 しゃべりたくもないし、書きたくもないし。ずーっと写真も撮ってないし、撮られてもない。多分いかなるものとも繋がりたくないんだろう。関係したくないんだろう。約束しても具合悪くなって行けなくなっちゃう。重症。

 でも、ミミさんの写真展は行きたいなーって思ってたから、最終日の今日、行くことにした。初日に行くはずだったし。

 それなのに、銀座まで行って電車でおえーってなって帰りかけたりとかして、あたしアホやんと思いつつ、見えない何かと戦ってギリギリ勝利。終了時刻15分前くらい、到着。

 ミミさんの写真、あおーい海だった。青ではなくて、あおって感じ。なんかやらかくって。「青」じゃかたすぎる。お片付けのときもいたから、実際のプリントのみで見た感じはもっと強いけど、あの白がほどよい空気にしてんだなーと思った。冬の海ってもっときっつい感じするもん、実際。あの写真の中の海になら、今でもザブーン、って浸かれる気がする。

 ザブーッと入っちゃえ、もう。

 写真見ただけでも、なんかザブザブーッとした感があるけど、ミミさんと話したのもなかなかいい波だった気がする。あ、また意味不明。

 とにもかくにも、海にいきたい。「行く」でなく、「生く」に近いかもしれない。
 
 あ、でも、この時期に海に入ったら、完全に逝くだろうけど。
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なかなか寝付けない夜だった。
4時過ぎ。窓の外がほのかに色づき始めたころ、ようやく眠りについた。
 
と思ってから、およそ30分後。うなされて目覚めた。
震えはとまらない。


現在の部屋に越してから、この春で3年が経つ。
当初から何度も感じることのあった、気配。
昨晩もまた、だった。
ここしばらく何事もなかったため、すっかり油断していた折の出来事だった。

眠りに落ちようという夢と現の狭間の頃合を見計らうかのように、それはやってきた。

ひとりで寝ているのに、だれかが隣にいるような温度と重量感。
そして、違和感。
向かい合っているのは、ミッキーとミニーのぬいぐるみのはずだ。おかしい。
部屋の入り口の方向から、ざわざわと囁き合うような微かな音。
意識を確立した途端、その気配はよりいっそう現実味を増す。

とにかく、この状態から逃れたい。そう、切に願った。
隣にいるのが人間ならいい。そう思い込もうとした。

しかし、相手は強気だった。
うなり声ともイビキともいえるようなノイズが、すぐそこから聞こえてくる。
それは徐々に大きくなる。
もういやだ。目を開けよう、起き上がろう。そう思うが、力が入らない。
そして、腕を摑まれるような感触。
次の瞬間、ものすごい力に突き飛ばされ、ベッドから投げ出された。

―はずだった。確かに、ベッドから落ちたと思った。
しかし、気づけばベッドの上。やはりぬいぐるみと向かい合い、横になっていた。


慌てて立ち上がり、明かりをつける。
何かを警告するかのように、切れかけた蛍光灯が瞬いた。

【注:実話です。】
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JOY

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シャクシャク余裕で暮らしたい
約束だって守りたい
だれかを愛すことなんて
ホントはとてもカンタンだ



 僕の大好きなYUKIちゃんはそう言っているが、僕には無理な話だ。

 余裕がない。

 一時、幾人もに「YUKIちゃんに似ている」と言われたことがあったけれど、僕は彼女のように柔らかに、滑らかにはなれない。
 

 こんなこと言っているバアイ、でもない。

 あっちでは喧騒。そっちでは略奪。
 そんな感じの世の中で、ぼやぼやした僕はいつか置いていかれてしまうのかもしれない。
―否、もはや置いてきぼりをくっているのかもしれない。

 僕はちゃんと楽しんで生きているんだろうか。


 1月も、あと1日と半分。
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LL教室のいちばん後ろの角。ここが私の特等席だ。

私がいようがいまいが、この教室の時間は流れていく。
だが、私がいると何だか怖いものを見るような目をクラスメイトたちは向けるのは何故なんだろうか。別にとって食ったりしないのに。

前のほうで声がしているが、そんなことには目もくれず伸びをする。
ふんぞり返った私の目の前に、逆さまになった世界が広がる。
この窓一面の景色は、そこらの社長室にある何百万もするであろう風景画より説得力がある。イミテーションに莫大な金額を費やすくらいなら、いっそ景色のいい場所にビルを建てたほうが安いだろう。

姿勢を戻し、ぼーっとテレビ画面を見やる。
不細工なウィノナ・ライダーが映っている。また万引きでもしたのか。シザーハンズが懐かしい。いや、待てよ。
―自分の顔だった。
電源の入っていないモニターのモノクロの世界に、不貞腐れた顔で、私はいた。

ヘッドフォンのむこうでは、お決まりの「英語」を口にする外国人ボブとジャネットの非生産的な会話が繰り広げられている。こんな英語話してる外国人、どこにいるんだよ。
それでも、ヘッドフォンをはずした世界で鳴り響くのは、その会話を必死に書き留めようとペンを走らせる音。

うんざりだ。

ヘッドフォンのプラグを引き抜き、自分のウォークマンに繋ぐ。
途端に、そこは大学の一教室でもインチキ外国人の日常でもなくなり、バカでカッコ悪いけれども最高にカッコいい男の子たちの青春が展開される。あの痛い音が、来る4月の同じ日を思い出させる。切ない。

机に向かっていたら、青春なのか。
勉強していれば、学生なのか。
そんなものに答えなど求めてはいない。


ここにいてもいなくても、時間は流れる。
私の人生は磨り減ってゆく。


綺麗なインチキより、汚いリアル。


私は私になるために、今教室を飛び出した。
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 最近、自分の中から勝手に言葉が溢れてきて、フィクションを書いている。
 何を思って書き始めたのか、自分でもよくわからない。

 なぜか一人称が「僕」で。

 限りなく事実なんだけどあたしじゃない視点だったり、まったくの虚構なのにあたしの視点だったり。

 普段強要されているのが事実を誇張して書くことだから、なのか。
 よくわからない。

 まぁいい。つか、どーでもいい。
 気が済むまで書こう。
 
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「冬が好き。だって生きているって気がするんだもん。」
これが彼女の口癖だ。

彼女は本当に無気力で、ちょっと目を離したら電池が切れたミニカーみたく止まってしまうんじゃないかと思うほどだ。僕は気が気じゃない。
彼女が外に出たがることはめったになく、毎日のように部屋にいて、音楽を聴き、本を読み、文章を書いている。
…かと思ったらボーっとしている。
こんなに変化のない日常の中で、よくもまぁ小説なんて書けるものだ。
そして、それを職業とできているのが僕には信じられない。
晴れわたった気持ちのよい日、めずらしく外に出たいと言ったが出かけた先は図書館で、地下にこもって書物を読み耽っていた。
彼女はそんな人だ。周りに不思議な人間だと思われている。
僕すらそう思う。

僕が彼女と出逢ったのはこの春。
だから、まだ彼女の好きな冬を一緒に過ごしていない。
このあたりの冬は寒さが厳しいと言うし、それこそ彼女は倒れてしまうんじゃないか。
僕は不安でたまらない。


あるとても冷え込んだ朝だった。
窓の外をじっと見て、彼女が僕にこう言った。
「ねぇ、公園に行こう。」
時刻は確か午前5時だった。寒くてベッドから出られない僕。
彼女はクローゼットからコートとマフラーを取り出し、僕に渡す。
「行こう。」
こんなにはっきり言う彼女を見たことがなかった。
寝ぼけ眼で着替えてコートを羽織り、彼女に連れられるまま、公園へと出かけた。

まだ夜の気配の消えない街の中は、静まり返っていた。
僕と彼女の足音が響き渡った。
サクサク。
いや、足音というより霜柱の砕ける音と言ったほうが正しいのかもしれない。
このあたり一面、白い霜柱が覆っているのだ。
彼女は嬉しそうに、わざと音を立てながら歩く。
サクッサク。サクサクサク。
「きっとね、そろそろ来るよ。私のお客さま。」
彼女は言った。
僕は彼女が何を言いたいのかわからなかった。
そして、こんなに生き生きとした彼女を見るのははじめてのことで、何だか戸惑った。

彼女は息を長くはいた。
楽しそうに、何度も何度も続けている。
「どうした?」
僕は訝しげに聞いた。
「あたしが冬を好きな理由を教えてあげようか。」
質問とは関係のないような言葉を彼女は口にした。僕は黙って頷く。
「人間っていつでも息をしている。それが当たり前のことだってみんな思ってる。でも、目には見えていないじゃない?私は自分が本当に息をしているのか、不安になるときがあるの。でもね、冬だけは違う。」
そしてまた、黙って息を吐いた。
「こうやって、自分の息が見えるでしょう。」
真っ白な息が彼女の手のひらへと消えていく。
「それだけじゃないわ。空からやってくるお客さまが、人間とは血の通い、温度を持った動物であるってことも教えてくれるのよ。ほら。」
そう言って空を見上げた。
空から、白い粉雪が舞っていた。彼女のちょっぴり高い鼻に、雪の花が一片とまった。
途端に、彼女の温度が花びらを溶かし、頬へと流れた。
こんな彼女を無気力だ、などと思っていた自分が恥ずかしくかった。
そして、彼女の生き生きした表情を見て、僕の心配は取り越し苦労だと感じた。


彼女が本当に病気だと知ったのは、それからまもなくのことだった。
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ハロウィンが終わったと思った途端、街はクリスマスムードに占領される。
日本人って本当にお祭り好き過ぎて、同じ日本人として呆れる。
僕はお祭りごとなんて大嫌いだ。
去年の正月。
うるさい街から離れようと、付き合っている彼女にさえ何も言わずに青春18切符で一人旅に出かけ、三が日を過ぎてから「あけおめ!」と電話を入れたところ、彼女は「あけおめじゃないわよー!」とおかんむりだった。
彼女の誕生日。
僕には仕事があったし、結局その日を終えてから彼女に会いに行ったわけだが、今日じゃ意味ないのだと彼女はむくれていた。

ああ、それにしても、クリスマスは特に嫌いだ。
僕は大好きな祖母をクリスマスシーズンに亡くしている。これがひとつの原因だろう。
それから、僕が中学生のころに両親が離婚しているので、家族揃ってクリスマスを祝った記憶もほぼない。友人たちが幸せそうに家族とケーキを囲んでいるころ、僕は普段通りに食事を済ませ、テレビをぼーっと見つめていた。
そういったことが災いしてか、僕は音楽を生業としているがクリスマスだのなんだのを描いた歌を作ったことは一度もない。


数週間ぶりに彼女に会った。
さすがに彼女も僕のマイペースに慣れてきたらしく、そんなに機嫌が悪そうではない。
…と思ったが、どうやら彼女もクリスマス気分に乗っかっているらしい。あー、やだやだ。
街の中は普段より人で賑わっていて、お店に入るのも一苦労。人ごみも好きでない僕にはととてもツライ。あー、やだやだ。
やっと入ったお店では悪趣味なクリスマスの飾りつけがなされていた。本当はもっとセンスのいいお店なのに。あー、やだやだ。
店内には、クリスマスソングが絶えず流れている。あー、やだやだ。
心の中で、僕は嫌気がさしていた。

「…何でそんなこと言うかな。」彼女が言った。
心の声のつもりだったのだが、思わず口にしてしまったらしい。
「だって、クリスマスソングなんて安っぽくて軽くて。こんなの歌じゃないよ。」
「何言ってるのよ。かわいそうだと思わないの?」
「へ、何でかわいそうだと思うのさ?」
「クリスマスソングもサンタクロースもこの時期だけのものなんだよ。」
「そんなの当たり前じゃん。1年中あったらうっとうしくて仕方ないよ。」
「そうだね、そう思われちゃうと思うわ。でも、あなたの歌は違うわよね。だって、時期に関係なく聴いてもらえるじゃない?」
「まぁ、そういう人もいるな。」
「でもね、いくら大ヒットしたマライアのあの曲だって、この時期にしか聴いてもらえないんだよ。他の季節には時期はずれだって見向きもされない。それはサンタクロースも同じなんだよ。この時期しか愛されない歌とサンタクロース。クリスマスぐらい愛してあげなきゃだめなんだよ。」
真剣な顔で言う彼女を見て、不覚にも笑みがこぼれた。
笑う僕を見てやっぱり彼女は怒ったが、それでも笑顔が止まらなかった。


今年のイヴは彼女と一緒にケーキを食べようか。
サンタと彼女に向けたラブソングでも口ずさみながら。
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夜の空にぽっかりと浮かぶ月を見上げて、幼いころの僕を想った。


あのころの僕は自由奔放だった。
空を飛べると信じていて、ベランダから落ちて大怪我したことがあった。
仮面ライダーごっこだ!とうっ!やぁ!としながら、田んぼに落っこちて真っ黒になりパンツまで泥にまみれたこともあるし、「スタンドバイミー」に憧れて、線路の上をどこまでも歩いていき、真っ暗な中迷子になってしまったこともあった。
脱皮しようとするセミを見つけて、無理やり殻から出そうとしてみたり、月が欠けるのを見て、ウサギはどこへ行ってしまったのかと聞き、両親を困らせたりもした。
虫取り網片手に屋根へ上って、星の欠片を取るんだと大騒ぎしたこともあったっけ。
でも、僕はへっちゃらだった。そして、とても幸せだった。
そんなやんちゃで困った僕を叱りつつも、愛してくれる両親がいたからだ。

そして何より、愛すべき自然がそこに広がっていたからだ。


あれから随分長い年月が経った。
僕はすっかり大人になった。
もうピーターパンのように飛べないことも知っているし、輝く星が何億光年もはるか遠くにあることも知っている。
仮面ライダーごっこだって、もうしない。
そんなことをするには年を取りすぎた。
危ないことをしてだれかに心配させることはまったくなくなった。
だって、僕にはもう子どもがいる。あのころの僕と同じ年頃になっている。

変わったのは僕だけではなかった。
あのころ僕が愛していた空は大きなビルに阻まれて、すっかり小さくなってしまった。
泥だらけになって遊んだあの田んぼはアスファルトに覆われ、夜空にかかる厚いスモッグが月のウサギを隠している。

だから、なのだろうか。
僕の子どもは、ちっとも外で遊ばない。空を見上げることもない。
毎日毎日テレビゲームをしていたり、カラオケに行ったり、遅くまで塾に行っていたり。
僕は反対したのだが、小学生のくせに携帯も持っている。
彼らには本当の自由も本当の自然も与えられていない。
そのことに彼らはちっとも気づいていないみたいだ。


月のウサギはいったいどこへ行ってしまったんだろうか。
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